マシン追加したものの

時折デジタル化サービスのオープンリール テープメディアにテープ速度4.75cmsものがあり、それはSONY TC-357Aというどこの学校にもあった究極の民生マシンで再生していた。このマシンは2trk MONOでスピーカーもついているというものだが、電子部品の劣化が激しく、電源ハムノイズがかなり気になっていた。
そこで、4.75cmsが使えるテープデッキはないものかと物色していたが、自分が中学生の頃に慣れ親しんだ、ナショナル・テクニクスのRS732uというデッキがジャンクではオークションに出品されていたので、激安で購入し、それをオーバーホールして、作動可能なまでに持ち込んだ。
電子系パーツはほぼ全交換に近い形で交換し、メカニズムもベルトを製作したりで1モーター機を復活させた。
そしてしばらく再生していたが、やはり高域が伸びてこないのはヘッドの摩耗が著しいということに尽きた。
このままではどうにもならないので、入手不可能な再生ヘッドを研磨し、再使用できるかどうかチャレンジしてみたのだ。

これが1971年頃に発売された、RS732uである。1モーターながら3ヘッド機で、50Hz・60Hz切り替えはキャプスタンスリーブとピンチローラー交換で対処する。兄弟機にRS736があり、そちらは38cms対応なので、キャプスタンスリーブとピンチローラー交換で似非サンパチ機にもなった。さらに多重録音可能で、自分は中学生あたりからこれで随分重ね録りをして音楽作った気になっていたという世話になったデッキだ。外装系は全て洗浄して、半世紀経過しているがかなり美品になった。

一番右側が再生ヘッド、真ん中が録音ヘッド、一番左が消去ヘッドである。このデッキは再生専用にするので、録音機能は不要で、ヘッドは減っているがそのままで、再生ヘッドだけ外す。メカ部分のヘッドにあたるパッドは茶色のフェルトに交換したりなど、残された整備はヘッド研磨だけである。

取り外した再生ヘッドはテープが当たる部分が著しく段差に削れてしまっているのがわかる。ここまで減るとテープがきちんとヘッドに面当たりしてくれないので、音は出るだけになってしまう。
手前側がRch奥の段差がはっきりわかる部分がLchである。再生レベルも当然ながらLchの方が低く、どうにもならない。まあ半世紀のうちどのくらい使われたかは不明だが、使い込まれて減ったのがよくわかる。これを研磨していってテープが当たる面をフラットにしてやるのだ。

大まかに#800のサンドペーパで段差を取るように削り込んで整形していく。一番凹んで削れているのがLchなので、全体をその減った高さまで削る作業だ。かなり削ってもまだまだ段差は消えない。

ある程度のところまで削り込んだら、全体にマーカーを塗って、凹みに残ったマーカーの色が完全に消えるまで削り込んでいく。マーカーがほぼ消えるあたりからサンドペーパーの番手を#1000→#1200→#1500→#2000と上げていく。
完全に消えたら、そこからはサンディングシートに交換して磨き上げる。
#3000→#5000→#8000→#1000→#15000と手間だけだが、このザラザラの表面がどんどん光って光沢が出てくる。

#15000の文字がヘッド面に反射して読めるのがわかるだろうか。
切削〜研磨までだいたい1時間半程度だから、重労働というわけではない。特にこのヘッドは廉価版のパーツだから、かなり柔らかく切削は簡単だった。もう新品は購入できないので、こういった手段鹿内のだ。ここまで仕上がれば、性能は十分期待できる。丁寧に使えばさらに研磨で使うこともできるはずだ。早速装着から調整をしてみる。

ヘッドを装着して煽り角とアジマスをテストテープを再生しながら調整して追い込んだ結果、19cmsであれば16kHzで(テストテープの高域限界)きちんと左右バランスが取れた再生が可能になった。4.75cmsで録音されていたものは、間違いなくその周波数は要求されないので、この状態であればかなりHi-Fiな音が出てくるはず。
実際市販のミュージックテープや、他のデッキで録音したものを再生したが、十分にHi-Fiであり、全く問題はない。いつでも4.75cmsいらっしゃいである。

あとは慣れ親しんだ自分にとっての名機?だから、長く付き合いたい。

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