AD変換依頼で送られてきたテープだが、Sonyの前身である東京通信工業(東通工)時代のもの。パッケージはグリーンで、送られてきた内容のテープリールよりま以前に使われていたAMPEXタイプのリールイラストが描かれていて、テープ本体の色が白になっているもの。すでに右上にはSonyと書かれているが、テープリールはSoniである。
内箱には東京通信工業と明記されていて、まだテープそのものが一般家庭に普及していなかった時代のために、テープの使用方法が書かれている。編集作業には切っても切れないテープカットとつなぎ方など。
本体リールはSonyの角ロゴの下にSoni-Tapeと明記されていて、2本スポークタイプの透明リール。後に3本スポークとなるのだが、リールサイズ表記とTRACKの表記部分など、そのデザインは変わることなく、3本スポークになっていく、唯一の違いといえばテープをはめ込む部分が斜めにカットされているのが特徴。
テプ本体を取り出すと、まだテープの取り扱いが一般的ではなかった時代のため、リールへのテープの巻き方などが書かれている。箱はかなりしっかりした作りで、紙製ながら厚みがあり、やがて訪れるテープメディア流行時代よりもかなりしっかりしている。また、箱に印刷するのではなく、全てボール紙の箱に印刷物を貼り付けているのが特徴である。
水色の紙には当時のテープ価格が明記されていて、29.10.1改とあるので、テープ本体は1954〜1955あたりに作られたものではないかと推定。
このテープ本体はPW-5のパッケージなので、当時880円。当時の大学卒初任給が10,140円であり、現在が20万円越えていることを考えると、現貨幣価値にして20倍で17,600円となるから、相当高額であったことがわかる。テープ機器本体もテープもかなり裕福な家庭でなければ持てなかったと想像できる。
また、価格表には紙ベースのテープの価格も明記されていて、実際に現物をみた事はないのだが、和紙を使ったもので、テープ本体は白色だったという事だ。パッケージの白いテープはこのあたりのものを表現したのだろう。
まだテープ磁気メディアそのものが発展途中だったということもあり、シリアルナンバー管理と愛用者カード、ご意見ご希望などを返送する葉書も同梱されている。
葉書にも書かれているが、東通工の時代から、テープレコーダーではなく、商品ブランドとして、テープコーダーという名称を使用している。本体機器もTAPECORDERと書かれている。Soniは外国人がSonyを発音できなかったともいわれ、Sonicが「音や音波」という表現もあるのでSoniとしたのでは。日本語ではソニ・テープと書かれている。
このテープを見ると、見た目が黒いのがわかる。時代的にテープベースはアセテートフィルムで、そこに磁性体を塗布してあるのだが、通常は茶色に見えるのが当時の磁性体色のはずなのだが、まるでバックコートテープのように黒色をしているのは驚きだった。テープ本体はさすがにカビこそないものの、ワカメ状になっていて、窯入れができないほどであった。再生音自体は低域も高域も減衰しているのだが、明瞭な音でAD変換後にFFTで見ても50Hz~12kHzくらいまでは十分再生できてフラットだった。内容から判断して65年経過しているとは思えないほどであった。