完全アナログレコーディング

普段はデジタル卓がある左手の部分にアナログ卓。録音はTASCAM MSR-16Sでテープアナログマルチレコーディング。

2022年にもなって、デジタルレコーディングが当たり前の時代に、あえて弊社から千葉県のあるスタジオにアナログテープMTRとアナログミキサー卓を持ち込んでかなり大掛かりなレコーディングを行った。
アーティストの要望で、70年代の音を収録してアルバムを制作したという”野望”から始まり、テープマシン整備から始まり、テープの調達、真空管マイクプリアンプなど、ある意味「古臭い音」を収録できる環境を作り上げた。
マルチトラックテープマシンはどうしてもトラック間に音がにじむという現象がある。クロストークともいうが、要するに隣のトラックに音が幾らか漏れて録音される。デジタルではありえないことなのだが、それをうまく利用してトラックの配置を行う。
そして、デジタル上では0db FSを超えると間違い無くノイズになってしまう音が、アナログの場合、テープの飽和による歪みが発生して、それが非常に心地よい音になったりする。写真を見ても分かる通り、マシンの下部にあるレベルメーターがかなりのトラックでオレンジ色にか輝いている。これは規定値の0dbを超えてさらに入力させているということで、使用テープを基準として、どこまで入力するかによってテープらしいサウンドが生まれてくれるのだ。
今回使用したNewテープはRecording the MastersのSM911でバイアス調整によって+4dbは十分に許容範囲。+6dbあたりで気持ちの良いテープコンプレッションサウンドになる。デジタルと違って実際の周波数帯域は狭いのだが、アナログでしか得られない押し出しがある。

使用はRecording the MastersのSM911(1/2幅)を古いリールに収めたパンケーキを購入。ケースは古いAMPEXやQuantegyだがテープ本体は全くの新品を用意。
17本用意したが、38cmsなので1本は30分。

収録はとことんアナログにこだわり、また中域の押し出しやパンチを求めて真空管使用のマイクプリアンプ、さらには50年以上前のヴェロシティマイク(リボンマイクを多数用意した。出来る限り当時の環境に近づけたいという配慮である。
録音時はミキサー卓のEQは一切使用せず(ローカットもしない)マイクとプリアンプを通過する楽器の生の音をそのまま収録。
なかなか興味深い音源が収録できた。

ヴォーカルやギターなど主要部分は真空管マイクプリアンプを使用。
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